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ドラマの様な言葉を

色んな事に諦めてもいいかもしれないと思えるタイミングで、冗談みたいな台詞を吐かれて、そこに留まる事が増えた。

 

それを夫に話したら「ドラマみたいな人生だね」と、意図は解らず返された。

 

前も話した通り、私はどうにも、物語の生き物の様な人間らしい。

 

それが他人にもバレているのかもしれない。

だから、ドラマの様な台詞を以て私を利用したいだけなのかもしれない。

 

大嫌いな男が私に既知で今更で当たり前の根性と夢を説く。

私は薄い笑顔を携えて、いつか旅に出る事を計画する。

けれど、その都度その場の誰かが、ドラマティックに私を引き止める。

 

それで納得するのは、やっぱりバレているのかもしれない。

この性質や本質や。

 

物語の住人だと思った事などないけれど、ソレを本気で言える人間を捜していたのかもしれないなと最近よく思う。

 

物語はドラマではあるけれど、本質は希望だから。

あり得ない希望を解りながら説得する事で、仲間が欲しいのなら。

喜んでそこに向かいたい。

凄いのはあなただ

マウンティングという行為そのものが苦手である。

要は、競争ってのが苦手だ。

 

例えば、走るのが一番とか、絵の写実性が一番とか。

そういう、解りやすい具体性の競争は愛おしい。

 

私が苦手なのは、社会における所謂交渉や、甘えたり、怒鳴ったり、褒めたり、ごますったり、なだめたり、流したり、馬鹿にしたり、嗤ったり。

そうやってコミュニケーションにおける、上下を作る競争がダメだ。

 

だから、「会社」というものに多分絶対ハマる事が出来ないと思っていた。

 

「会社」ってのは、そういうマウンティングが巧いヤツが上にいるから、きっと自分はずっと使われるだけの消耗品になるんだろうなと、嘆いていた。

 

上司が変わって、何故か認められて、何故かやたらめったら重宝された。

結果、周りが変わった。嘘みたいに変わった。

 

周りを見渡すと、私みたいにマウンティングが苦手だから実技や稼働速度を意識して生きてきた連中も、楽しそうにしていた。

 

上司にドン引きしつつ、本気ならこの人はきっと凄いと思った一言は

「この部署の誰よりも多分私が一番出来ます。だから腹を括りました。」

だった。

 

どんだけ自意識過剰なのかと驚いたが、結局その人は逃げないで全部やり切った。

多分まだ全然途中なのだろうけど。

 

上司はよく私に「凄いね」「やっぱり頼んでよかったよ!」と言ってくるが、そうじゃない。

 

マウンティングが苦手で、社会や会社になんの希望も持たなかった私や私の様な人達の尊いものに価値を与えたアナタが凄いのだ。

 

私たちが欲しかったモノに、価値を与えた。

あなたという人が凄いのだ。

執着が群像に消えたのかもしれない

忘れたい事があって色々始めた。

iPhoneを買って、就職を決めて、結婚して、昇進して、自分の稼いだ金で両親を旅行に連れて行って、引っ越して、本を作った。

 

忘れたかった事が夢に出て来なくなった。

 

最期にみた夢は、酷く悲しいけど、普通に考えたら間違っていない夢だった。

 

あれから、私は職場も変わって、与えられる言葉も変わって、失った自尊心を取り戻したような気がした。(が、そういう話の手前の話で今普通に辞めたい)

 

久しぶりにその顔を見てみた。

デジタルの記録で眺めては、いつも沸いた何かしらの感情が、沸かないと判った。

 

多分、ここでも何度も嘘をついた「忘れた」という事を、ようやく半分くらいそうだと理解した。

 

わざわざ。

忘れたと言いたいなんて結局覚えているものだ。

 

今は、忘れてはいないけれど、激情のナニソレや、圧倒的な希望とか。

そういう事がその発想根本的に懐かしいと。

思える程度に多分歳を取ったし、取ってしまったんだと。

 

iPhoneを買って、就職を決めて、結婚して、職場で胸ぐら掴み合う喧嘩をやって、救われて、ちゃんと認めてもらって、辛くて告白して、相手を巻き込んで、成果を出して、昇進して、自分の稼いだ金で両親を旅行に連れて行って、引っ越して、今にも死にそうな祖母に絵を描いてやるって言ったら「18のアナタが描いた絵だから意味がある」とか言われて、夢を喋って夢を聞いて本を作って、世界を眺めていいのかどうかとか悩んで、やっと母校に笑いながら行ってラーメン食べました。

 

そういう事を振り返って今その顔を見て、群像の中に一人になったかもしれないのかもしれないと。

 

あったことは消せないけど、あった事は消せないけどそうだなと思い耽った。

 

貧困を恐れる

金を食べている音がする。

その資本を嗤いながら食べている常識という音がする。

侮蔑して、嘆く。

 

金を食べて夢を叶えた話を聞いた。

見た事が無い貧困で人が死んだ話と同じくらいの感情と涙が湧いた。

 

沈む船から降り続け、沈む船体より荷物の重さを量り、そうやって豊かさを追ってしか生きていけない程きれいじゃない自分の人生を嘆いた。

嘆き過ぎて知恵熱を出して身体を壊した。

 

私は私を侮蔑する。

そして絶対的な貧困がまだ夢の話だと願ってる。

山を見せたい

年末に実家に戻った折、永い事大好きだった裏山を伴侶を紹介しようと連れて行った。

雪が深く、何もかもが白く、枯れて、音の無い。

大好きな景色だ。

 

結果を先に言おう。

連れて行けなかった。

 

詳細はこうだ。

私の大好きスポットに連れて行くには、裏山の川を越えなければならなかったのだが、この年に限って大豪雪が起きてしまい、遊歩道が埋まってしまっていた。

それでも何とか連れて行きたいと、川を越えようと川に降りてみたが、逆に死ぬかと思うサバイバルを経験した。

 

端で話せば、要はアレだ。

川を越える為に、川に降りたら雪に登れず、遭難するのかもしれない。

デッドorアライブ!!?

 

という。

 

自分がホイホイ愛した景色がそんなヤバめな世界だったとあんまり信じたくないんだが、結局伴侶には美しい真っ白でまっさらな裏山を見せてやれず、結構盛大に落ち込んだ。

 

そもそも何で裏山に川があるんだよ。意味が解んねえよとか本気で腹が立ったが、そこ含めての大自然だと思いなさい私。となだめた。

 

今年はじゅんぐりで夫の親族の手前、帰省は難しいだろうがいつかあの美しい名前のない山を見せたいと思う。

私の故郷は名前が無い自然で、名前が無い雪山だ。

なんなら殺人が起きたらしい。酷いな!

 

でも美しい。美しかった。それを伴侶に絶対に見せたい。

夢は金で買える

夢は金で買えない。

 

という人の夢や理想は、本当にたった自分にしか解らない夢や理想なんだと思う。

 

私もそういう人間だと思い込んでいた。

でも、楽しい人間関係の世界があると解って、時々対立はするけれど、互いに切磋琢磨しながら「私たち」という利益を追求する事が許される環境に出逢って、私の夢や、幸福は、そういうものだったんだと理解した。

 

そして、それを金で叶えている環境を見て、「そうか、買えるんだ」と思った。

 

企画とかアイデアとか文才とかアートとか。

時代に依って随分価値観が変わってしまうモノに夢を持つって事は、結構そういう事な気がする。

 

夢を叶える為に組織を作って、幸福な自分を眺めて楽しむ人生を理解する。

組織の為に、下げたくもない頭を下げて、万人の幸福を望むよりも余程マシな気だってする。

 

夢が時代に依って変わる欲望から始まった価値ならば、人の人生を買ってしまった方が多分早い気がすごくする。

 

私は多分そうなんだけど、何かが微妙に違うせいで、40歳に向けて金で幸せを買う計画すら立てられない。

 

別に金のために疲れた顔で愛想笑いをされたくないっていう、そういう善人的な話でもなくて。

そんなに安い夢だったって、認めたくないだけだと思う。

甘栗通り

漫画でも描くつもりだったんだろうだけど、今思う。

なぜ甘栗。

 

___________

 

「甘栗通り」

 

お腹が空いた…

 

こんな所に甘栗が。

がし

むしゃむしゃ

「こら!」

 

ずばっ!

指が一本なくなった。

 

痛い

 

「だめだよ」

 

だめなのか。

 

痛い。

痛い。

だめは痛い。

だめは痛い事。

 

 

だれかがまた甘栗を勝手に食べようとしている。

それは、痛くして良い事だ。

ずばっ。

「いたい!!なにをするの!」

え?だって痛い事をするんだよ。

「なんて酷い事をするんだ!」

だってそれはダメで、だから痛いんだよ。

「知るか!」

ずばっ!

今度はもう一本指が無くなった。

 

痛い痛い。

 

 

また誰かが勝手に甘栗を食べようとしている。

えっと。指を切ったら切られてしまうから。

えっと。

なんだ。

それは、指を切られるよ。

「なに?」

勝手に食べたら指を切られるよ。

「でもお腹が減ってどうしようもないんだよ。」

でもだめだよ。

「じゃあどうしたらいいんだよ、お腹が減ったんだ。」

えーっと…

お店の人が出てきてこう言った

「お前の指を一本切らせてくれたら、こいつに甘栗を食べさせてやろう」

えっと、いやだ。いやだよ。

「ひどい」

「酷いヤツだ」

えっと。

「なんて酷い。お腹が減った。」

「指くらいいいじゃないか」

えっと

えっとえっと

えっと

 

 

すぱーんと僕の指がもうひとつ飛んだ。

残りが一つ。

 

「なんてやさしいひとだろう」

 

聴こえない。

 

いたいよお。

いたい。

いたい。

 

いたい。

 

最後の指は守らなきゃ。

えーっと。えーっと。間違えない様に。

 

 

勝手に甘栗を食べたらいけない。

勝手に甘栗を食べている人の指を切ったらいけない。

勝手に甘栗を食べている人に注意をしてもいけない。

 

長い道に長く連なって甘栗屋さんがずっとある。

軒先に美味しそうな甘栗が山の様に積もって

美味しそうな匂いにつられて人が寄っている。

 

 

甘栗に近づかない事が、最後の指を切られない方法なら、

甘栗を見ない様に。

通り抜けて、ずっと通り抜けて、最後の指を守って。

 

 

まだ

 

まだ

 

まだ

 

甘栗屋さんは連なって、終わらなくて。

 

 

終わらない。

 

甘栗

香しい香り

群がる人

切られて飛んでく指

痛そうな誰か

全部の指が無くなった手

 

 

 

痛い

 

 

痛い

 

 

息も絶え絶えに、どうやって抜けたか解らないけれど、甘栗屋さんの通りを抜けて

光だけしかみえない道に出た。

 

最後にたった一つだけ残った指を誇らしげに、その光に向けたら

「だからどうしたの?甘栗の美味しさも知らないで」

 

 

そう言って

光から優しい刃が浮かんで、柔らかくクビを跳ねました

 

 

目が覚めて

また指が五本ある。

まだ指が五本ある。