甘栗通り

漫画でも描くつもりだったんだろうだけど、今思う。

なぜ甘栗。

 

___________

 

「甘栗通り」

 

お腹が空いた…

 

こんな所に甘栗が。

がし

むしゃむしゃ

「こら!」

 

ずばっ!

指が一本なくなった。

 

痛い

 

「だめだよ」

 

だめなのか。

 

痛い。

痛い。

だめは痛い。

だめは痛い事。

 

 

だれかがまた甘栗を勝手に食べようとしている。

それは、痛くして良い事だ。

ずばっ。

「いたい!!なにをするの!」

え?だって痛い事をするんだよ。

「なんて酷い事をするんだ!」

だってそれはダメで、だから痛いんだよ。

「知るか!」

ずばっ!

今度はもう一本指が無くなった。

 

痛い痛い。

 

 

また誰かが勝手に甘栗を食べようとしている。

えっと。指を切ったら切られてしまうから。

えっと。

なんだ。

それは、指を切られるよ。

「なに?」

勝手に食べたら指を切られるよ。

「でもお腹が減ってどうしようもないんだよ。」

でもだめだよ。

「じゃあどうしたらいいんだよ、お腹が減ったんだ。」

えーっと…

お店の人が出てきてこう言った

「お前の指を一本切らせてくれたら、こいつに甘栗を食べさせてやろう」

えっと、いやだ。いやだよ。

「ひどい」

「酷いヤツだ」

えっと。

「なんて酷い。お腹が減った。」

「指くらいいいじゃないか」

えっと

えっとえっと

えっと

 

 

すぱーんと僕の指がもうひとつ飛んだ。

残りが一つ。

 

「なんてやさしいひとだろう」

 

聴こえない。

 

いたいよお。

いたい。

いたい。

 

いたい。

 

最後の指は守らなきゃ。

えーっと。えーっと。間違えない様に。

 

 

勝手に甘栗を食べたらいけない。

勝手に甘栗を食べている人の指を切ったらいけない。

勝手に甘栗を食べている人に注意をしてもいけない。

 

長い道に長く連なって甘栗屋さんがずっとある。

軒先に美味しそうな甘栗が山の様に積もって

美味しそうな匂いにつられて人が寄っている。

 

 

甘栗に近づかない事が、最後の指を切られない方法なら、

甘栗を見ない様に。

通り抜けて、ずっと通り抜けて、最後の指を守って。

 

 

まだ

 

まだ

 

まだ

 

甘栗屋さんは連なって、終わらなくて。

 

 

終わらない。

 

甘栗

香しい香り

群がる人

切られて飛んでく指

痛そうな誰か

全部の指が無くなった手

 

 

 

痛い

 

 

痛い

 

 

息も絶え絶えに、どうやって抜けたか解らないけれど、甘栗屋さんの通りを抜けて

光だけしかみえない道に出た。

 

最後にたった一つだけ残った指を誇らしげに、その光に向けたら

「だからどうしたの?甘栗の美味しさも知らないで」

 

 

そう言って

光から優しい刃が浮かんで、柔らかくクビを跳ねました

 

 

目が覚めて

また指が五本ある。

まだ指が五本ある。